「定められし未来」 Part.2
ふたりなら
全てが終わり、外へ出ようとしたその時。
死んだと思われていたクイックシンクスが動き出し、アレキサンダーの制御を開始。せっかく止めたコアまでもが再起動してしまいます。
彼は全身の多くを機械化しています。故に至近距離の銃撃でもとどめを刺しきれていなかったのです。
彼の目的は過去に飛び、今回の敗北を「なかったこと」にすること。
しかし……
アレキサンダーがクイックシンクスの要求を“拒絶”。
蛮神が……それも機械が命令に従わないなど、にわかに信じられない事態が起こります。
命令に逆らったアレキサンダーのエニグマ・コーデックスは四散。クイックシンクスはエネルギーの逆流を受け、遂に倒れました。
一体なぜ、アレキサンダーはクイックシンクスの命令に反したのか。
モニターは“2回”点灯。
それはかつてシュレディンガーに対して戯れに決めたルール。「2回の応答」は……Yesを示します。
アレキサンダーの中には……ダヤンの魂が残っていたのです。
直後、コアの暴走が始まります。
制御装置としてのコーデックスが壊れてしまったことで、周囲の環境エーテルを無尽蔵に吸収し続ける危険な状態になってしまったのです。
それでも。
モニターは2回点灯しました。
それは彼女にとって、望んでいたことだったのかもしれません。
ミーデは「彼」の元へ行くことを決意し……
コアへ身を投じます。
演算空間
ミーデの目覚めた場所。
そこには……彼女の大切な人、ダヤンの姿がありました。
ここは、「階差機関」が創りだした演算空間……アレキサンダーが見る、機械仕掛けの夢のなかだ。
……一族の皆の彼らの宿命を変えることは、不可能だった。すべては、「時」に矛盾が生じないよう、必然的に起こされたことだったんだ……。
アレキサンダーはここから過去と未来のあらゆる可能性を見渡せる。「時」を超えたこの場所で……僕は、その思考に触れた。理想郷を願う心が生んだ、完璧なる「科学の神」の思考にね。
階差機関が予見した、幾億、幾兆の未来……。そのなかには「青の手」が勝利し、歴史の管理者となる明日も、自身の意思で「時の翼」をひろげ、霊災を阻止する歴史もあった。
そうして、ありとあらゆる可能性を、演算にかけた結果……アレキサンダーは、とある結論に達した。
……それは、「歴史への不干渉」と「自身の抹消」。
理想世界に自身の存在は不要……それが科学の神の答えだったのさ。
蛮神の力は、行使されるたびに、膨大なエーテルを貪る。歴史への干渉をくりかえすことで、最後には星を殺す……。だからアレキサンダーは、不干渉を選んだ。歴史を、あるがままの形で……人の手にゆだねることにしたんだ。
……それが、科学の神が下した「聖なる審判」だった。
いつの日か、星の命運が……ひとりの戦士にゆだねられる時が来る。その先は、階差機関にすら予測不可能な領域だけど……科学の神は、信じてみたかったのさ……
彼女という「光」を。
変わらぬ願い
……ただ、ひとつだけ放置できない歴史があった。
アレキサンダーが召喚されて、まもなくの時期だ。それは幾多の歴史の可能性のなかで、最も不安定な瞬間だった。
「時の翼」が「青の手」に渡れば、歴史は幾度となく改変される。そのたびに、莫大なエーテルが蕩尽され……ついにはアレキサンダー自身が、最後の霊災を引き起こす。
大いなる惨禍を防ぐため、科学の神はちいさなクァールを使って、「時の環」を完成させていった。すでに、廻りはじめた歴史を……「変えない」ためにね。
そう……この子はアレキサンダーが遣わせた、永遠の幼獣。機械仕掛けの使い魔だったんだよ。
さあ…………最後の仕事に、とりかかろうか。芽吹いた破滅の種子を封じる、償いの旅路だ。
角笛と融合した「コア」は、もはや破壊不能な状態にある。何度壊そうとも、自己修復するだろう。科学の神の意思を守り、人の手のおよばぬ場所に封じる者が必要だ。
……怖くはないか?
アレキサンダーが生成する、“閉じた時空”……僕たちはそこで、永遠に終わらぬ一瞬をくりかえすことになる。
たぶん……私がここに来たことで、「時の環」は閉じられるの。いまも、憶えてるわ。あのときの私の願いが、きっと……すべてのはじまりだった。
あの男……トラヴァンシェーは言った……角笛に祈れば、何でもかなうって。ちいさかった私は、ある願いを抱いて、それを受け取ったの。
「ダヤンといつまでも、いっしょにいたい」って。
私の願いは、あのときから変わってないわ。
「君の知らない明日へ」
少し大人に
主人公たちは無事に脱出しましたが……閉じた時空に封じられたアレキサンダー。
魔法障壁の中の時間を止めることで、ミーデとダヤンはコア暴走の危機から星を救うことに成功したのです。
望んだこととはいえ……彼等が時空に閉じ込められてしまったことには変わりなく。友人を失ったラウンドロクスは一人落ち込んでいました。
彼女の手には、偶然カバンに入っていたコーデックスのかけらがありましたが……しかし、もう光りません。
理想を追求した書、エニグマ・コーデックスは、その思想に少しでも疑いを持つ者には読むことができません。しかし、一途な想いは狂信となります。その結果は……このざまです。
理想は創り上げるもの。
その過程では、必ず現実の壁にぶつかります。
誰も知らない明日
ラウンドロクスは、エニグマ・コーデックスのかけらをミーデに返したいと願いますが……二人は今、閉ざされた時空の中にいます。
そこへシャノアが現れました。
神出鬼没で正体不明な幼獣は……
二人のもとへ行けるかとの問いに2回鳴き、Yesと答えました。一縷の望みにかけ、ラウンドロクスはシャノアにエニグマ・コーデックスを託します。
ホトゴ族の伝説
一足先に帰っていったヤ・シュトラに頼まれ、バックリクスにとある本を届けます。そのシャーレアンの本には、エニグマ・コーデックスを記したミーデの祖先、青い髪の一族のことが書かれています。
その内容はにわかに信じ難いものでした。
ホトゴ族の始祖は、金属の巨人から現れたふたりの子ども。手にすると光る黒い石を持つふたりの名は……ダヤンとミーデであると書かれていたのです。
蛮神を封じる役割から開放されたふたりが、シャノアに預けた石を持って遠い過去に生まれ変わり、一族の祖となったのでしょうか……。
こうして、蛮神アレキサンダーを巡る騒動は終わりを告げました。
しかし……理想の未来を手に入れるため、これからも努力を続けます。
誰も知らない明日を手に入れたその時。
おとぎ話などではなく、願わくば本当に、ふたりが無限の時空から解放されることを願って……。
クイックシンクスは、自身が蛮神を制御できることを隠していた!
ヤツの自滅でコーデックスは失われ、「コア」が暴走を開始。制御を離れた古代の秘宝が、破滅への暴走を始めた……。止めたのは、ミーデの恋人ダヤンだった。「コア」に取り込まれ、エネルギーにされたはずの恋人の魂が、蛮神そのものに宿り、ミーデの呼びかけに応じたのだ。
アレキサンダーは、「階差機関」という演算装置を搭載している。シドによると、この機械ならば、ヒトの魂が形を保てるだけの、かりそめの空間……「演算空間」を生成しうるという。その空間内であれば、ダヤンの人格が形を留めているかもしれない。
さらに、より高次の段階では、アレキサンダー自体の意識が覚醒し、超越的な「機械の神」というべき存在が誕生している可能性もある。「コア」へ飛び込んだミーデは、そこでダヤンと再会し、蛮神を「閉じた時空」へと封じた……シドはそう推測する。そこはあらゆる事象から切断された、ふたりだけの永遠の牢獄だ。
「ただ、彼とふたりで、世界の果てまで行きたかった」……かつて、ミーデはそう語った。ある意味で、「機械の神」が彼女の願いをかなえたともいえる。
……そしてここに、ひとつの伝説がある。ミーデの属する「ホトゴ族」の祖先は、金属の巨人から現れたふたりの子どもで、名前は「ミーデ」と「ダヤン」だという。
破滅の種子を封じるという役割を終えたふたりの魂を、「機械の神」が遠い過去へと送り届けた、とでもいうのだろうか?だが…………仮にそうだとすると、ひとつの疑問が生じる。そもそも、「エニグマ・コーデックス」の著者の構想は、一族に伝わる「金属の巨人」の伝説からきた、とされているのだ!
では、アレキサンダーという存在は、誰の頭から生まれたんだ……?