2023/03/18 メインクエスト5.0-漆黒【05.アリゼーを探して】を更新しました。

【雑記】ニーアオートマタという唯一の体験。ゲームにおいて、ストーリーとは必須なのだろうか。

ここ数年、年末年始休暇に一本ゲームをクリアしています。一昨年はドラクエビルダーズ2、去年はゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド、そして今年はニーアオートマタ(NieR:Automata)をプレイしました。

実は、私はニーアオートマタを数年積んでいました。
2019年、FF14へコラボコンテンツ「YoRHa : Dark Apocalypse」が実装されたことによってようやく腰を上げたわけですが……結果見事にドハマりし、こうして3年前のゲームにも関わらず感想記事を書いて、沼の中から手をこまねくに至ったのです。もっと早くやればよかった!

というわけで、自分にとってこのゲームのどこが良かったかを理解するため、というのはもとより、FF14プレイヤーの方や、それに限らず少しでもニーアオートマタに興味を持っている方がもっとこちら側に来てくれるよう、本稿を書き綴ったわけです。

ネタばれについて
全体として、あまりストーリーのネタバレにならないような書き方をしているつもりではありますが、一応留意していただけると幸いです。

当サイトについて

エオスト -Story of Eorzea- では、Final Fantasy XIV(FF14)のクエストストーリーをまとめています。あらすじ記事は以下のリンクよりどうぞ。



ゲームの概要

どんなゲームか

「ニーア オートマタ」(NieR:Automata)は、2017年にスクウェア・エニックスからPS4向けソフトとして発売されたゲームであり、現在はSteamでPC版も発売されています。開発はアクションゲームに定評のあるプラチナゲームズです。

2010年に発売され、その世界観とストーリー、そしてBGMが話題となってコアなファンを獲得していたPS3向けソフト「ニーアゲシュタルト/レプリカント(以下、前作)」の続編にあたります。なお、この手の続編によくあることですが、当然前作をプレイしたほうが楽しめる点があるのは間違いありません……が、なくても大丈夫です。
私は前作をプレイしていなくても楽しめました。
確かに設定やストーリー展開等、すべてを堪能しようと思ったらおそらく前作プレイが必要だと思います。

しかし、ニーアオートマタが良作たる点はそこではありません。

リメイクについて
なお、ニーアゲシュタルト/レプリカントは、リメイクがPS4、Xbox One、Steam向けに2021年4月発売予定であると発表されています。楽しみです。
参考 『NieR Replicant ver.1.22474487139…』SQUARE ENIX

人がいなくなった廃墟にて、アンドロイドと機械生命体が織りなす物語は美しく……そして儚いものです。
もっとも美しいだけではなく、ディレクターヨコオタロウ氏のいやらしさ――怪我をしたところを「こういうの好きなんでしょ」といいながら無理矢理みせつけてくるような――展開はしっかり健在なので、そういう期待を裏切られることはありません。

ストーリープロローグ

遠い未来、宇宙からエイリアンが侵攻してきました。防衛戦に敗れた人類は地球上から追い出されてしまいます。

地球でエイリアン達が作り上げた「機械生命体」が跋扈する中、月へと逃げ延びた人類は、再び地球へと帰るためにアンドロイド兵による軍を作り上げ、幾度にもわたる攻撃を繰り返し続けています。
しかし決定打を与えることはできず、戦いは数千年にもわたって膠着状態が続いていました。

そんな中、人類は決戦兵器として新型アンドロイド兵士「ヨルハ機体」を開発。それらを編成した「YoRHa部隊」を戦線へと投入します。

YoRHa部隊の一個体である「2B」、そして最新型スキャナーモデル「9S」が敵の超巨大兵器破壊作戦の中で共に行動することになったところから、物語は幕をあけます――。

構成

ニーアオートマタ全体のストーリーは、1周しただけでは終わりません。とはいえ同じ話を何周もするわけではなく、最初2Bを主人公としたルートをクリアし、次に同じ話を9S側の視点でプレイし、最後に、全体の真実の物語をプレイするという流れです。ですので「周」というよりは、「章」といったほうが実態に合っているかもしれません。

加えて、プレイ時間もさほど長くありません。私はすでにデータを消してしまったので正確な数字を把握することができないのですが、サブクエストを7割ほど行い、クリア時間が全体でおよそ40時間弱程度だったと思います。メインだけをやっていたらもっと短かったでしょう。零式クリアまでの時間より短いですね。

個人的にはちょうどよいと感じました。多くの娯楽にあふれ、可処分時間が限られている中で、プレイ時間40時間程度なのは結構ありがたかったりします。長ければ長いほど……ボリュームがあればあるほど良かった時代はとうに終わったんです。

というわけで、気軽に楽しめるゲームだと思います。
まあ、ストーリー展開は相応に気軽ではないですけれどもね。

ゲームと物語の関係

私がニーアオートマタに心酔した最も大きな理由は、ストーリーはもとより、ゲームとしての「体験」そのものにあります。というわけで、その魅力について語るためにもゲームとストーリーの関係性について少々紐解いてみようと思います。

いつからゲームにシナリオが含まれ始めたか

ゲーム――本稿ではいわゆるテレビゲームのことをゲームと呼称しますが、ゲームが生まれた当初、フレーバーとして説明書などに一言触れられる設定はあっても、マシンパワーの不足もあり、ストーリーを語るためにゲームというコンテンツが使われることはありませんでした。

本格的にストーリーがゲームに組み込まれるようになった最初はいわゆるアドベンチャーゲームの類だったそうです。その後、アナログゲームのテーブルトークRPGをもとに作られたWizardryやUltimaが生まれ、日本にやってきます。これをプレイした堀井雄二氏が、ゲームでもストーリーを語ることができるんだ! と作ったのがドラゴンクエスト。結果、日本ではRPGが大成しました……という話は、端折っているため正確ではないですけれども。

つまり言いたかったのは、ゲームはストーリーを語るための道具として生まれたのではないということです。ゲームのフレーバーとしてストーリーが加えられ、ゲームの発展と共にストーリーを楽しむためのコンテンツの一つとして進化してきました。今や、場合によってはゲーム性とストーリーの立場が逆転することすらあります。
実際私たちもゲームのゲーム性ではなく、ストーリーに惹かれてプレイすることも多いことを考えると、その変化は驚くべきかもしれません。

というわけで、実のところゲームがゲームたりえるためには、ストーリーは必ずしも必要ではありません。逆もまた然りで、ストーリーを楽しむためにゲーム性が必要とは限りません。

それどころか、実のところ互いに邪魔にすらなりえるのです。

ゲームにおいてストーリーは必要か

これは私がFF14のストーリーまとめを始めたきっかけのひとつでもあるのですが、ゲームはプレイ時間が長い分、ストーリーを忘れがちです。例え十数時間……ゲームとしては比較的短時間で終わるものであっても、一気にプレイできる人は少なく、数日に分けることになります。結果合間があいてしまいますし、あくほど人はストーリーを忘れていきます。多くの人が、ゲームをプレイしている最中に「今なぜ自分はこのダンジョンを攻略しているのか」を忘れてしまった経験があるのではないでしょうか。

というわけで、非常にストーリーは面白いけれどMMORPGであるが故にプレイ時間が長くて話を忘れがちなFF14のストーリーまとめサイトがあるんですよ。エオスト –Story of Eorzea- というんですけど……。

閑話休題。

加えて、失敗というのも没入感を削ぐ原因になりえます。最後のボス、もうあと少しで倒しきれたのに! という時のゲームオーバーは、プレイヤーに緊張感を与えると同時に失敗したとき興ざめさせる危険性もはらんでいます。

また、戦闘そのものが物語にとって邪魔である可能性もあります。話を知りたいけれどアクションは苦手とか、難易度が高すぎて自分ではクリアできないとかがその類ですね。

逆に、ゲームを楽しみたいからストーリーが邪魔だということもあるでしょう。ドラゴンクエスト7は、全体のストーリーのあまりの長さもさることながら、プレイ開始後数時間一度も戦闘がないことが驚きをもって迎えられ、ともすれば賛否両論点でもありました。

ゲームとストーリーが良好な関係であるためには、ゲームのためのストーリーであり、ストーリーを活かすためのゲームである必要があります。

ゲームのストーリーは、とってつけるだけでは意味がないのです。

ゲームとしての「体験」

ストーリーを楽しむだけであれば、そのための媒体は様々あります。小説、漫画、アニメ、ドラマ、映画などなど。そもそもゲームである必然性はないのです。

【雑記】コンテンツには、媒体によって差はあるのだろうか。物語はどう生まれ、誰のものなのか。

ではなぜゲームにストーリーがあるかといえば、それは先述のとおりであり、本来おまけのような存在であったはずでした。しかしゲームの進化に伴い、ストーリーを語るための総合的な舞台装置としてゲームが用いられるようになりました。

ほかの媒体とゲームの最も大きな違いは、プレイヤーがストーリーに介入できる点です。

例えば小説であれば「修行して強くなった」の一文で済まされる主人公の成長物語が、ゲームでは実際にプレイヤーがある程度の苦労をする必要があります。当然強敵には何度も立ち向かい、工夫し、いよいよ勝利したときには、プレイヤー自身の思い出になりえるでしょう。

ゲームのストーリーをプレイヤーが心の底から楽しむためには、ゲームのストーリーをプレイヤーのストーリーにしなければなりません。

ノベルゲームのように、ストーリーそのものにゲーム性を絡める例もあります。逆にストーリーを全くなくす例もあります。が、実は残念ながら、ゲーム性とストーリーを強く絡めることはなく、相互に並行しているだけのものも多いです。
それでも十分感動を与える事もできるのですが、これも先述の通り互いに邪魔をすることもあり、必ずしも高めあっているかといえば疑問なことも多かったりします。

ニーアオートマタという「体験」

というわけで、ゲームとストーリーの関係性についてちゃんと整理する必要があったため、長い前置きを経てやっとニーアオートマタの話に帰ってきました。

というのも、私が感じたこのゲームの最も良い点は、ストーリーの良さ、戦闘の気持ちよさもさることながら、ゲームとストーリーの融合、ゲーム体験そのものに価値を見出そうとしている点にあったからです。

主人公はアンドロイドです。そのため、ゲーム開始後すぐにゲーム中のキャラクター(9S)によってメンテナンスされる場面があります。普通のゲームであれば画面暗転後、チューニングの音がして終了……等ですが、ニーアオートマタの場合、メンテナンスと称してオプション設定を実施させてくれるのです。その後、オプション内に自爆スイッチの権限承認項目が現れることで、これがオプション画面なのではなくアンドロイドとしてのインターフェースなのだとプレイヤーに実感させます。

ほかにも同様の演出は施されており、プレイヤーはニーアオートマタというゲームをプレイするのではなく、ニーアオートマタという体験をするに至ります。メタな表現を嫌う人も当然いらっしゃると思うのですが、気にならないくらいに自然な演出が為されていると私は感じました。

データの消去

プレイヤーキャラクターのひとりである9Sは「スキャナーモデル」であり、情報戦に特化した個体です。そのため、通常の戦闘のほかにハッキングで敵を倒すことができます。ハッキングを行う画面は、弾幕系のシューティングゲームのように表現されるのですが……私個人としては、このシューティングがちょっと苦手でした。

しかし、実はとあるエンディングを迎えた際、エンディングをクリアする為(ちょっと変な表現ですが)には、難易度が高めのシューティングをクリアする必要があります。

苦手なシューティングを頑張り、なんとか乗り越えた……と思った先に待っている絶望的な難易度。クリアするのはとても無理だと思った時、とある助けの手が差し伸べられます。

私はこの助けの手を、泣きながら掴みました。
そうしてクリアし、エンディングを迎え、迷うことなくデータを消しました。

実は、エンディング後データを消すルートもあることは知識として知っていました。プレイ前は絶対消すものかと思っていたのですが、消さずにはいられなくなったのです。

それはきっと、ゲーム体験が自分の体験になったからなのでしょう。

アンドロイドとして「生きた」プレイヤーは、数多の戦いを乗り越え、そして最後、自らすすんでそのデータを消すのです。
このゲームは、データが大切なのではない。自分が歩んだ体験こそが宝物だったのだと理解するから。

おわりに

どうか「体験」してほしい

ゲームプレイ動画の配信が一般的になってしばらく経ちました。人のゲームは面白いですし、私も個人的にプレイが少し面倒なゲームのシナリオを知るために動画を見ることもあります。

しかし、個人的に絶対自分でプレイするべきだと思うゲームが3つあります。

ひとつはFinal Fantasy XIV、特に漆黒のヴィランズです。MMOであるということで敷居が高めなのも理解しますし、漆黒編に至るまでには相応の時間がかかります。それでも漆黒編をクリアしたときのプレイヤーの感情は語るべくもありません。漆黒編の評判があれほど良いのは、新生編から漆黒編までを歩んだプレイヤーの体験の物語であるが故なのです。

もうひとつはDetroit: Become Humanです。結構な数の方が配信しているのを見かけますが、あれは初見で攻略を見ず、自分でやるべきゲームです。Detroitは膨大な選択肢と膨大な分岐があり、とてもすべてを体験することはできません。それによって、他のノベルゲームのように「分岐を埋めていくゲーム」ではなくなっています。あまりに膨大故、プレイヤーの行動が唯一無二になっていきます。ムービー中に突如ボタン操作を求められる、いわゆるQTEは通常のゲームでは嫌われますが、仮に失敗してもそれがもとで物語が分岐します。それらすべてがプレイヤーの体験となり、プレイヤーにとって唯一の物語となっていくのです。

そしてもうひとつがニーアオートマタです。

ストーリーを知るだけならばきっと他人の動画で十分です。しかし、他人の動画を見ただけではきっと、このゲームの真の良さに気づくことはできません。

プレイヤー自身が体験して初めて、ニーアオートマタというゲームは完成します。

興味はあるけどプレイしたことのない方は、絶対に自分でやるべきです。少なくとも私はそう思いましたし、ゲーム体験が宝物になりました。

多くの方が、このゲーム体験をしてほしい……などと、3年間積んでいた私が偉そうにも思うようなことでもないのですが、そう願ってやみません。

FF14「YoRHa : Dark Apocalypse」

当サイトはFF14のシナリオまとめサイトなので、せっかくだからそのことについても触れておきます。

パッチ5.1から、ニーアオートマタを題材として24人で攻略するコンテンツが実装されています。とはいえ、大人数なので一人当たりの責任感は比較的軽く、ある程度気軽に挑戦できるものです。

よくある名前だけを借りたコラボレーションではなく、ちゃんとFF14の中にニーアオートマタを落とし込み、練られたストーリーは一見の価値在りです。ぜひニーアオートマタをプレイした人にはやってほしいですね。

今新生編を始め、いちからYoRHaを目当てに進めるのもなかなか大変ではあるのですが……大丈夫、FF14はメインストーリーがちゃんと面白いので苦にならないはずです。なによりストーリーが分からなくなったら、それをまとめているサイトもあります。エオスト –Story of Eorzea- というんですけど……(2回目)。

いろいろ書きましたが、ニーアオートマタは本当におすすめです。あなたにとって唯一のゲーム体験となりえるものだと思います。少しでも興味を持ったらぜひプレイしてみてください。

本記事が、少しでもあなたの背中を押すきっかけとなれば幸いです。

人類に栄光あれ。

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権利表記
本稿に掲載しているニーアオートマタの画像は、以下著作権者に由来します。
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