先日、暗黒騎士レベル60のジョブクエストシナリオまとめが終了しました。
暗黒騎士のジョブクエストは総じて高評価ではあるものの、フレイシナリオがあまりに有名すぎるが故に、他のレベル帯のジョブクエストの評価がされていない傾向にあります(※個人の見解です)。
暗黒騎士60のクエストは、イシュガルドの問題、竜の血の真実、そして暗黒騎士の極意である「愛」について三軸をテーマに進む物語です。
それらのうち、本項では3つ目「愛」について、なぜイストリドが最後に微笑んだのかを考えてみたいと思います。
エオスト -Story of Eorzea- では、Final Fantasy XIV(FF14)のクエストストーリーをまとめています。あらすじ記事は以下のリンクよりどうぞ。
前提として
あらすじ
こちらをどうぞ!
STORY | 3.ジョブ・ロール-132暗黒騎士レベル50-54【怒れる男と少女の話】 STORY | 3.ジョブ・ロール-132暗黒騎士レベル56-60【そしてふたつの名は消える】
……とはいえリンクだけだと少しばかり乱暴なので、以下簡単なあらすじです。が、かなり端折っているのでぜひ個別リンクから読んでいただければなあと。
暗黒騎士の極意を求めるシドゥルグ。彼は神殿騎士に命を狙われているリエルという少女を助けたのだが、何故少女でありながら命を狙われているのかが不明だった。リエルを護りたいと願うシドゥルグと主人公は、彼女が命を狙われる理由を調べると……どうやら彼女にはドラゴン族の血が混じっている可能性が浮上した。
竜の血は一度飲んだだけでは完全にドラゴン族にはならないが、一度飲んだ時点で竜の血は体内で作用する。その状態で子をなせば、生まれてくる子はドラゴン族の力を有することになる。
リエルの母親、名門コーリニョン家の女主人であるイストリドは、夫であった男が異端者と通じていたことを知らず、リエルをなした。その結果、リエルにはドラゴン族の血が流れているのだ。ドラゴン族との戦争が続くイシュガルドにおいて、ドラゴン族の血が混じっているなど禁忌の存在。神殿騎士を指揮する彼女の母親、イストリドからリエルの命を救うため、決闘裁判に挑む。
主人公とシドゥルグは、イストリドとの決闘に勝利。
リエル自らの意思でイストリドの首を跳ね、新たに生きていくことを決意するのだった。
コーリニョン家の現状
本シナリオで鍵となるコーリニョン家。
それがどういった家柄であるかは劇中でほとんど語られないものの、発言からある程度類推することが出来ます。
数多のイシュガルド正教高官を生んできた名門貴族
落ちぶれているわけではなさそう
現在はイストリドとリエルしか残っていない
以上、影響力もある名門貴族であるが、消えるのは時間の問題であることがうかがえるのです。
コーリニョン家の課題
コーリニョン家は名門であるが跡継ぎ問題を解決しなければ早晩断絶することが明らかです。長男が家を継ぐことが一般的なイシュガルドにおいて、名門の跡継ぎに収まることができる婿養子の立場は、貴族の次男三男にとってかなり魅力的でしょうし、実際イストリドも難なく婿養子をとっているようですが……その相手が異端者のシンパであったのは大きな不幸でした。
親が見つけてきた婿だったのか、イストリド自身が望んだ結婚だったのかは定かではないものの……どうあがいても生家を継ぐことができない次男三男は、イシュガルドの体制に不満を抱く傾向が強く、それ故異端者達に付け込まれることが多いのかもしれません。
いずれにしろ、コーリニョン家はドラゴンと化した異端者に襲われることとなりました。もしかしたらその襲撃の際、イストリドの両親は亡くなったのかもしれません。そうであるならば、イストリドは一晩にして夫を失い、両親を失い、望む望まないにかかわらず主人となることを迫られ、のこされたのは娘であるリエルのみという状況に陥ったことになります。
更に悪い事に、リエルにはドラゴン族の血が混じっているのです。イシュガルドにとって禁忌の存在である混血児リエルは、家のためを思えば生かしておくことはできません。
最愛の娘であり、おそらくコーリニョン家の跡継ぎとして大切に育てられたリエルは一転、コーリニョン家のアキレス腱となり、家系を完全に滅ぼしかねない存在となってしまいます。
イストリドの行動の不可解
なぜイストリドはすぐにリエルを殺さなかったか
その後、イストリドは娘を牢に拘束します。それが数か月であったのか数年であったのか……具体的にどれくらい拘束し続けたのかは定かでないものの、少なくともすぐに殺そうとしなかったことだけは明確です。
正直、コーリニョン家のアキレス腱たるリエルを消すことが目的なのであれば、生かして牢につないでおくというのはリスクでしかありません。現に問題を先送りにした結果、リエルが暗黒騎士によって救出されるという結果をもたらしています。
そもそも、何故彼女はリエルを地下牢から出してしまったのでしょうか。自分でも発言していましたが、仮に殺す気がなかったとしてもずっと地下牢につないでおけばそれでもよかったはずです。
リスクではあるものの、公になる可能性は低かったでしょう。
なぜイストリドは煽ったのか
ストーリーの終盤、紆余曲折を経て暗黒騎士の庇護下となったリエルを殺す目的で、イストリドは決闘を申し込むも敗退するのですが……勝者である暗黒騎士シドゥルグは彼女の命を奪わず、慈悲をかけるのです。
しかし何を思ったのか、イストリドは「自分を殺さない限り命を狙い続ける」と煽るような発言をし、最終的にリエル自身の決断で首を跳ねられてしまいました。
この時、嘘でも良いから「もう命を狙わない」と言えば、いくらでも体制を整え直し、更にリエルの命を狙うことができたでしょう。その上、これは命乞いしてシドゥルグがかけた情けでなく、シドゥルグが自らかけた情けなのです。すがらないのは理にかないません。
イストリドの真の目的
イストリドの行動は、全てリエルを生かすためだったのでは
これまでまとめてきたように、イストリドの行動は一部理にかなわないものです。
家を護る為にリエルを殺すのであればすぐに殺すべきでしたし、地下牢から出すべきではなかった。決闘裁判で負けたのであれば何よりも生き延びることを考えるべきであった。
何より最も理解しがたいのは、遂に命を落とす直前、リエルに向けた微笑み。
これまでリエルの命を狙い続けてきた女とは思えないやさしい微笑みを最期リエルに向けたのです。
これ以降は妄想です。根拠はありません。
しかしこれらの事実は、次のように推論することでつじつまが合います。
イストリドの行動は、全てリエルを生かすためのものだったのではないでしょうか。
イストリドが選んだもの
夫の裏切りにより多くを失ったイストリドは、家を護るか、リエルを護るかの二者択一を迫られました。
家を護る為には、ドラゴン族の血が流れているリエルを生かしておけない。
一方で、リエルを生かそうとすれば家を護ることはできません。
イストリドは家を選択したように思えます。それは彼女自身の態度や、リエルにしてきたことからも明らかです。
しかし、もし自分が居なくなった後のことを考えて、リエルに後悔が生まれないようにわざと辛く当たっているのだとしたら。
自分が追手の全権を握ることで、リエルが生き延びる可能性を少しでも増やそうとしているのであれば。
これらは推測にすぎませんが、そう考えるとイストリドの行動の不可解な部分は辻褄が通るのです。
「かもしれない」妄想の物語
ここから先は私の妄想です。あくまでそうだったかもしれない話であり、公式に設定されているものではありません。
イストリドの青春
名門貴族コーリニョン家の一人娘として生まれたイストリドは、幼いころから重大なプレッシャーを受けて暮らしてきました。
将来、適正な人材を婿養子に迎えることで、名門を存続させねばならないというプレッシャーです。
年頃となった彼女は、とある男性と恋に落ちます。彼は優秀であり、家柄も申し分なく、なにより長男でありませんでした。結婚話はとんとん拍子で進み、婿養子となった彼と長女リエルを設けます。
幸いにして、理想的な形で家を護ることに成功したかのように思えました。
裏切り
しかし、幸せな時は長く続きませんでした。
その男は異端者のシンパであり、名門コーリニョン家の情報を異端者達に流していただけでなく、なんと竜の血を飲んでいたのです。
コーリニョン家から必要な情報を引き出したと判断した男は、遂にドラゴンの姿へ完全変態。コーリニョン家を滅亡させようとします。
その野望は駆け付けた神殿騎士の手で防がれたものの……コーリニョン家は、イストリドとリエルだけになってしまいました。
信じていた夫に裏切られ、両親を亡くし、家も壊され、家系断絶の危機に瀕したイストリドに、更なる絶望が襲います。
リエルにもドラゴン族の血が流れているという事実です。
竜の血は複数回飲まねば完全なドラゴンになりません。しかし、一度でも飲めばその身体には竜の力が宿り……生まれてくる子供にも引き継がれます。
ドラゴン族との戦争が続くイシュガルドにおいて、竜の血との混血児などもってのほか。コーリニョン家の跡継ぎどころか、どうあがいてもリエルを生かす方法はありません。ましてやコーリニョン家は名門なのです。
他の道は望むべくもなく……しかし手をかけるのを恐れた結果、彼女は自らの娘を牢に入れるのでした。
暗黒騎士
数か月は経ったでしょうか。イシュガルドにとある噂が流れます。
盾も掲げず、誰にも仕えず、ただ自らの正義のために戦う者達――暗黒騎士の噂です。
その話を聞いた時、イストリドにとある考えが浮かびます。
そうだ、彼等に娘を任せればいいのではないか。
そうすれば暗黒騎士達の手でリエルは生き延び、コーリニョン家の名前が傷つくこともないのではないか。
そう思った彼女は、牢へ行き、娘を処刑することと――リエルが後ろ髪をひかれないよう、突き放すようなことを言いました。同時に、処刑場所を暗黒騎士の耳に届くよう噂を流します。
処刑当日、折よく現れた暗黒騎士達はリエルを救出。娘の命は護られました。
しかし安堵したのもつかの間、誤算が生じます。後日、暗黒騎士の一人が捕縛、決闘裁判にかけられ殺されてしまったのです。
このまま彼等の逃げ道がふさがれてしまえば、せっかく逃がしたリエルの命が危ない。
悩んだイストリドは、コーリニョン家の家柄を最大限に生かし、自らが暗黒騎士の追撃隊の指揮をとれるように手をまわします。彼等と決闘裁判をし、自分が負ければリエルの命を護ることが出来る。そう考えてのことでした。
しかし、これはリエルを生かす為に自分が追撃を失敗することが前提の作戦であり、つまりコーリニョン家を――そして自分の命を犠牲にする決意でもありました。
最期の微笑み
紆余曲折を経て、イストリドはついに暗黒騎士達との戦いに敗れます。
これで自分の首を跳ねられれば、リエルはきっと生き続けられる。
そう思った時、シドゥルグは慈悲をかけるのです。
何故。暗黒騎士達は目的のためなら慈悲もない者達だったはずではないのか。ここでもし自分が殺されず、イシュガルドに帰ることになれば、おそらくほかの追手がかかることになるでしょう。その時リエルの命が護られるかは分かりません。
自分がここで死ぬことで、リエルの命は護られるのです。
焦ったイストリドは、ここで逃がせば永遠に追いかけ続けるぞと脅しをかけます。
その時、剣をとる決意をしたのは意外なことにリエル自身でした。
全てを断ち切り、明日へと向かう。
最愛の娘は暗黒騎士と共に成長し、自分の手で未来をつかみ取る決断をしたのです。
イストリドの首に、遂に作戦通り剣が振り下ろされます。
最期の瞬間、母親イストリドが抱いた想い。
どうか幸せに。
微笑みの中、彼女は命を落としたのでした。
暗黒騎士の愛とイストリドの愛
以上は全て妄想です。
極力辻褄が通るように書いていますが、何の根拠もありません。
暗黒騎士の極意は愛です。
一方、イストリドがリエルに抱いていたのもまた愛だったのではないでしょうか。
イストリドは基本的に悪役として現れます。
ゲーム中終始悪役としてふるまうも、最期の時だけ微笑むのです。その微笑みは、彼女の存在を額面通りに受け取るならば決して意味が分かりません。
しかし……愛の成就が故の微笑みだったらいいなと、私は思うのです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
おすすめ記事
【FF14・雑記】オメガは心を得られなかったのか 【FF14 雑記・考察】何故ガレマール帝国の言うことは正しく、魅力的に見えるのか。“悪の組織”の主張が蠱惑的な理由。 【FF14 雑記】クロニクルクエスト:アレキサンダーのタイムラインと元ネタまとめ 【FF14・雑記】暁月のフィナーレネタバレ有感想 ~エオルゼアの中心で愛を叫んだケモノ~ 【雑記】ニーアオートマタという唯一の体験。ゲームにおいて、ストーリーとは必須なのだろうか。 【FF14・雑記】FF14オケコン2022 -Eorzean Symphony- 感想 【FF16】FinalFantasy16 感想 その01 プロローグ(体験版)部分
親になったばかりの自分に納得できる解釈で、涙がでました。親が子を殺したいわけがありません。悪魔の子だろうが、竜の子だろうが、生きて幸せになって欲しいと願います。真実もこうであって欲しいとおもいます。
コメントありがとうございます!
そしてご承認が遅れてしまい、申し訳ございません。
悪役であったはずの彼女は、たった一度だけ微笑みかけます。ただそれだけから妄想を広げた文章ではありますが、私も本当にこれが真実であれば良いなと思って書きました。
暗黒騎士のジョブクエストは愛の物語なので、きっとそうであるにちがいありません。
結果は悲しいものですが、イストリドの愛が娘にも伝わっていれば良いですね。
何の予備知識もなく暗黒騎士のジョブクエストを進め、Lv60でこのエピソード。
イストリドの最期の微笑に救われました。やはり彼女のリエルに対する憎悪はみずから仕組んだものだったのでしょう。
一方、初めは慈悲をかけようとしたシドゥルグの胸中はいかばかりか。リエルが決意した瞬間、彼はすべての仕掛けに気づいたかもしれない。気づいてなお、イストリドの命懸けの企みを成就させてやるのが自分の務めと解したのかもしれません。いやむしろ、そうであってほしい。そうでなければ暗黒騎士は救われない。
なんだか、このお話は歌舞伎や講談に通ずるものがあるように思いました。西洋世界のプレイヤーたちはどのような感想を抱いたのでしょう。
コメントありがとうございます!
あくまで状況から、こうだったらいいなという願望も込めた文章です。真実はイストリドと共に文字通り暗黒に葬られてしまいましたが……
確かにシドゥルグも辛い立場となってしまっていました。リエルに決定権を委ね、自身はそれを実現するための力として振る舞っていた彼の心中も、察するにあまりあります。
歌舞伎……触れてくればよかったと今思っています。海外でも暗黒騎士クエストや同じシナリオライターの書いた漆黒編の評判は非常に良いと聞きますので、もしかしたら国に関わらず愛は共通なのかもしれませんね。